これまで、自分の37cmドブソニアンで見えた惑星状星雲を中心に夏~秋の見ごろな惑星状星雲をおおむね網羅して紹介してきました。
ここでは、一度、惑星状星雲について整理して、惑星状星雲の楽しみ方(私の事例)を紹介させていただきます。
惑星状星雲を好きになった訳
ちょうど20年近く前にマゼラン雲に超新星1987Aが現れました。その数年後にはその超新星の残骸の回りに明るいリング状の星雲が形成されていることがハッブルの望遠鏡などで発見され、確認されました。ちょうど、ハレー彗星の地球接近の後、見るべき対象を見失ってしまった自分にとっては超新星の発見やその残骸に発見されたリング状の星雲はとても印象に残っています。
その後しばらくは明るい超新星が発見されるたびに、その光度観測を行うようになりました。昔、高校生の時に変光星の観測を集中して行っていた経験があることから、昔を思い出しながら、楽しい日々を送っておりました。
そんな折、少しでも暗い超新星を見たいと思うようになり、それまで使っていた13cmの反射望遠鏡を手放し、21cmの反射望遠鏡を手にします。ニュートン式反射からカタディオ系反射にしたことで高い倍率が手軽に得られるようになり、より暗い星を見れるようになりました。そこで出会ったのが惑星状星雲です。
超新星爆発とは直接関係ありませんが、リング状の星雲という点では似たような対象だったと思います。しかも、惑星状星雲を見るのに適したフィルターの存在を知り、それを手に入れて見た惑星状星雲の姿はそれまでのノーフィルターで見る惑星状星雲の姿とはかなり異なっていました。有名なM27を見ると、その姿はそれまで写真で見ていたダンベルの姿とは様相が大きく異なっていました。ダンベルの持つ部分に垂直方向にボーっと錘の部分の大きさよりも大きく光芒が伸びているわけです。その時の驚きは忘れられないものとなりました。
これまで紹介してきた惑星状星雲の多くは明るさが10等よりも暗いものです。これらの姿をフィルターを通してもう少しはっきり見たいと思い始めてドブソニアン望遠鏡の入手に至ります。それから見る惑星状星雲は後に紹介する中心星も見え始め、それまでの惑星状星雲観望の趣とかなり異なってきました。写真を撮影する趣味を持っていない故に、紹介する惑星状星雲は全て眼視での観望対象としてのご紹介です。
惑星状星雲の見方(私の事例)
惑星状星雲を見る時には次の2つの点に注意が要ります。
1. 惑星状星雲の波長を通す、バンドパスフィルターを付け、コントラストを上げて観望する。
2. できる限りシーイングの良い時に、でき得る限り倍率を上げてみる。
私の場合には37cmドブで7mmアイピースに2倍バローをつけて、476倍で見ることが多い。
ファインディング用アイピースは12mmですので、278倍となります。シーイングの悪い時にはその半分(バローレンズを外して)の139倍で見ることが多い。ちなみに、シーイングが悪い時には、例えば91cmの望遠鏡をもってしてもM57の中心星を見ることはできませんでした。その時の倍率はおよそ300倍とおうかがいしました。
中心星を見るには大抵の場合には300倍程度の倍率では見えず、500倍近くの倍率にしないと見えない。したがって、倍率を余り上げられないようなシーイングが悪い時には中心星を見ることはほとんど無理なことが多いので、さっさと他の対象を見るように諦めをつけるのが肝心。
低倍率でも楽しめる、あるいは低倍率でないと見えないようなM27やNGC7293以外ではそもそも本体の大きさが1'も無い対象が多いわけだから、惑星と同様あるいはそれよりも小さいわけなので低倍率で見てもその構造はもちろんのこと、中心星を見ることはほとんど無理。細かな構造を楽しめるのは惑星を見る時と同様にかなり倍率を上げて見るのが良い。露出オーバーになった写真と比べると眼視の方が細かく見えていることに気付くのは惑星観望と似たような部分があります。紹介するのに使う星図はDSSからのものなので、特に明るい惑星状星雲の場合には露出オーバーとなっていて本体の複雑な構造はほとんど写し出されていないと思った方が良い。
惑星状星雲の生い立ち
惑星状星雲の生い立ちに関しては様々な文献があるので、詳細を記述するのは避けさせていただきます。
多くの惑星状星雲の実際の大きさは直径およそ数光年程度です。中心星はもとは太陽質量の0.5倍~4倍程度の重さの恒星でした。それが進化する過程で外側の水素が燃え尽きる前に、中心部のヘリウムに火が付き、炭素や酸素を作り始めますが、この質量では炭素や酸素に火が付くことはなく、ヘリウム燃焼シェルができた段階で,赤色巨星化します。この赤色巨星時代に外層大気をゆっくりと放出し、惑星状星雲の元を作り出します。その後、元の恒星は炭素と酸素ばかりで大部分のコアが白色矮星へと縮小してしまいます。
この白色矮星からの紫外線放射を受けて、放出された外層大気が照らし出され惑星状星雲として見えると言われています。
最近の観測ではこの最後の段階での大気放出が球シェル状(球対称)ではなく、双極流的に、2方向にジェット流のように放出されると考えられる事例が多く見つかっています。例えば、M2-9、M76、NGC6302、CRL2688などの砂時計状(バタフライ状)の惑星状星雲です。
これからの惑星状星雲観望
このような見るのにはかなり辛い思いをしないと見えないような惑星状星雲ですので、一般に紹介されていないものが多いのが実情です。しかし、意外に見易かったり、ドブソニアンをお使いの方であれば余り使うことがない倍率かもしれませんが、口径(mm)の1倍~2倍というチャレンジャブルな倍率とフィルターを駆使することでハッブルが映し出すような惑星状星雲を自身の眼で見ることができます。ということで、まだ見たことのない対象を含め、まだまだ私の惑星状星雲観望は続くと思います。何せ,カタログ上は1,600個ほど見つかっているそうですから。さらにはつい2年ほど前に惑星状星雲が形成され始めたもの(V838 Mon)まで発見されており、ドブソニアンを使いこなせる間中楽しませてくれるものと思っています。
ふねさん、
惑星状星雲へのこだわりが良く分かりました(^^)/
きっかけがハレー彗星の後というのは初めてお聞きしました。
投稿情報: 安田 俊一 | 2005-08-28 21:17
安田さん、
それまでは、超新星は13cmで見えるなんて思いもしなかっただけでしょうかね?。1987Aは肉眼でも見えたんでしょう?。その後に現れた1993Jはそれら先入観を払拭してくれました。1993Jは安田さんとの初めての出会いのきっかけの対象でしたね。
しばらくは超新星マニアになっていましたよ、ホント。(^^ゞ
投稿情報: 舟田 雅夫 | 2005-08-29 21:09
舟田さんは、学生の頃に、まじめに観測をしてらっしゃったんですね。素晴らしい!私は、流星の計数を遊びでやったくらいで、その時からお気楽観望派です。(笑)
小さな望遠鏡でも、その生い立ち、はるかな時間を旅してきた光を捉えるロマンから惑星状星雲は好きな対象でした。今は、大きなドブもありますので、紹介して頂いた対象をこれから眺めて行きたいと思います。
謝謝
投稿情報: 南八ヶ岳の住人 | 2005-08-30 09:31