続いて私の感想なんぞ...
《安田の印象が残ったことリスト》
●プロキシマを見れたこと
太陽に一番近い恒星です。離島を除いて日本からは見ることは出来ません。距離は4.22光年とのこと。子供の頃に図鑑で4.3光年と覚えた星ですが、何回もオーストラリアには来ていますが、なかなか見る機会はありませんでした。ケンタウルス座αの2番目の伴星です。角度でαから2度ほど離れていて、11等星として見れました。星の多い場所ですのでなかなか分からないことと、GSCの位置から公転で移動してずれているようで、1分ほど違ってました。GSC 9010:810がスペクトルや等級からプロキシマですね。
A国から帰国直前の時間が無い時によーやく特定できたので、ちょっと感動しました。ちなみにM5.5V(表面温度2,670K)で最も赤い星の部類ですが、眼視でも赤く見えるかと思いましたが、暗いため色は分かりませんでした。褐色矮星に属します。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%9E
●強烈な木星像
今回のツアーでは残念ながら40cm反射でディフラクションリングは見れませんでしたが、それでも日本とは比較にならないほどシーイングは抜群に良いです。角度では0.2~0.5秒は解像できるかという感じでした。HSTの画像さながらです。
全日程で1日だけシーイングが落ちる日がありましたが、それでも日本の最高レベルですから、クーナバラブランで最高の時は凄いものがあるんでしょう。
木星の縞の複雑さ、フェストーンや大赤班の複雑な模様、こりゃ何時間見ても飽きない凄い光景ですね。実際、トラさんは半分くらいの時間木星を見ていたように思いますね。
ここでNinja-400とLightBridge40cmの木星像の比較を行いましたが、どちらもほとんど同じ様に見えてました。優劣付けがたしと思いました。ちなみに最高の見え方は、双眼の見易さもあり、双眼装置+エクステンダ+A10mmでした。2inch双眼装置も試しましたが、これも悪くはないのですが、アイピースの重さで光軸がずれるためか、トラさんの装置には及びませんでしたね。2inch双眼装置+エクステンダ+Nagler22mmで広視界の中を動いていく木星も捨てがたいのですね。
それにしてもサイディングスプリング天文台がある地だけあって、シーイングはいつも抜群なのは本当に羨ましい土地です。
●LightBridge40cmドブソニアン
新兵器の本国で$1,999という破格なドブソニアンですが、まだ日本で販売されおらず、日本での最初のインプレかもしれません。
光学系ですが、木星像、恒星像で比較するとほぼ互角だと思いました。ただしスパイダーの光条はLightBridgeのほうが強く、その分、阻害されると感じます。フォーカサーは2スピードで感触は良いです。トラスタイプなので日本で使うにはトラスカバーは必須でしょう。トラスの組み立てはStarSplitterやObsessionと比較しても格段に早いのは素晴らしいです。トラスの面倒さが軽減されてます。LightBridgeの弱点は風に弱いことでしょうか。水平、垂直とも回転がスムーズ過ぎて、風があると動いてしまいます。かなり気を使います。トラスカバーなしでも風には敏感なので、トラスカバーを付けるとさらに辛そうです。アイピースもバローを付けたり重めなアイピースを付けるとバランスが崩れます。ちょっとシビアで疲れます。
付属のサイトファインダーですが、可も無く不可も無くという感じですが、私にはサイトファインダーだけで導入するのは辛いかなと思いました。ファインダ脚としてビクセン互換なようなので、5cmくらいのファインダは欲しいですね。特に初めての天体やマイナー天体を導入する場合はですね。
アイピースはミード26mmQXワイドアングルが付属していますが、軽いアイピースの割りには性能が良いと思いますが、ペンタXWとかナグラー、EWVなどの高性能アイピースは必須でしょうね。周辺像の崩れはちょっと大きめです。ただ目位置には寛容で疲れない感じです。付属のアイピースとしては良心的だと思います。
トラスはアルミそのもので、また迷光処理もちょっと不十分です。オーストラリアは光害が皆無ですが、それでも星の光、天の川の光でコントラストは落ちているハズで、反射防止に植毛紙を貼ったりしたほうが良いですね。
組み立てはトラスにも関わらず簡単に工具なしに光軸調整含めて出来ます。独りでは重量等でちょっと厳しいかもしれませんが、セッティング出来なくはありません。トラスなのでコンパクトですが、架台がちょっと大きいのでセダンでは難しく、ワンボックス、ワゴンでないと厳しいでしょう。そこは機動力としてコンパクトになるNinjaが優位ですね。小さな車で素早く移動観望可能なので。重量は全部で60kgほどで、Ninja-400の1.5倍です。鏡筒部は一人で運ぶのは危険だと思います。
日本では米国に比較して10万円ほどアップしますが、それでも破格だと思います。恐るべしミード。
Light Bridge 40cmの全景...白いのはちょっと気になります.黒いのは出ないの?
トップリングから主鏡を見る...スパイダーはNinjaのほうがちょっと細い
Ninja-400、Light Bridge 40cm、Schwarz-150s双眼をゆっくり運ぶ
●エータカリーナの周りの星雲
これはトラさんから指摘されて、見てみると本当にオレンジ色をした不思議な星雲でした。くびれが悩ましく、可愛らしいという感じでしょうか。HSTで撮影した写真は知ってましたので、こんな風に見えるとは思いませんでした。感動だなぁ。
大気中のエアロゾルが少なく透明度が高いためだと思いますが、この地で見る天体は色が本当に綺麗でした。オレンジの星が非常に綺麗に見えます。ジュエリーボックス星団の中の特徴的な星、エータカリーナ、本当に綺麗。
●天の川の強烈さ
これは毎度のことですが、かなり明るく、遮蔽物の陰が出来るのがわかります。実際、雲が出てきても雲を通して天の川の明るさを感じます。それと暗黒星雲の入り混じった複雑な姿を目の当たりにして、銀河系中心に吸い込まれるような錯覚すら覚えます。
ちょうどさそり座、いて座が天頂付近にあり、さそり座の頭部まで広がる大きいバルジが見えて、さそり座からへびつかい座での暗黒星雲が入り込んで、まさにスペクタクルです。こればかりは圧倒されるという感じですね。
ifの世界ですが、南半球での天文学がもっと盛んであったら、ハッブル以前に銀河系の発想が生まれたんじゃないかと想像してしまいます。球状星団の特徴ある分布、天の川の形状、触発されて発見できないかなぁ。
●球状星団の宝庫
言わずもがなオメガ星団は天頂付近に見れて、プラノキュラ+2xバローでは筆舌に尽くしがたくおそらく数万個の星々が輝いているさまは絶景でした。視直径は55'で月の視直径の倍です。北天最大のM13は霞んでしまいます。迫力は言葉で伝えられないのが本当にもどかしいです。スケッチなんて出来ません。
さらに姿形で素晴らしいのは小マゼラン星雲の傍にあるNGC104で、M15の集中度近く、M15を巨大にした感じ。視直径は50'もあり、M15が18'なので直径で3倍もあります。面積は9倍ですね。これも美しくずっと見ていても飽きない球状星団です。ちなみにM13は20'。
●ガム星雲
今回、Ninja-400とSchwarz-150s双眼で頑張ってトレースしました。淡いのは間違いないのですが、網状星雲のNGC6960のような河の流れというかレースのような構造がそこかしこに見え、流れを追うと面白く広大な超新星残骸なのが楽しいです。一番明るい部分は赤経08h37m、赤緯-43度あたりだと思いますね。
●アンテナ銀河
複雑な二つの銀河の連結部分のまだら模様が見えることと、アンテナの付け根でちょっと延びた部分が見えました。ただ長く延びたアンテナまでは見えませんでした。
●重星チェック
普段は重星を見る機会は少ないのですが、シーイングが抜群なので幾つか挑戦しました。アンタレスは40cmでは、結構離れたところに緑色の伴星が見えて色の対比が美しいです。簡単に見れました。
それとシリウスBにも挑戦しましたが、シリウスは夕方、明け方とも条件が悪く、低空なのでさすがにムリでした。ちゃっきりさんのアドバイスでは高度さえ高ければ十分見えるとのこと。シリウスを見ると大気差で色が分かれている状態だったので無茶だったかも。秋に来ることがあれば再挑戦してみたい天体です。
定番かもしれませんが、ケンタウルス座αリギルの強烈な明るい二重星。プロキシマがあれだけ暗いのと対照的です。
またみなみじゅうじ座αも面白い二重星でした。
●銀河団が一杯
ケンタウルス座銀河団AGC3526は日本でも見れなくはないですが、高度が低いので13等級の銀河が非常に淡くやっとという感じ。この地では天頂なので15.5等級くらいまでOKで52個の銀河をカウントできました。渦巻銀河が多い印象です。
うみへび座銀河団AGC1060はケンタウルス座銀河団AGC3526よりは日本では高度も高く、明るい12等級あたりの銀河もあって、いつもお薦めしている銀河団なんですが、これも天頂付近で見ごたえがありました。
●黄道光がやっぱり邪魔
かなり明るく天の川と比較すると黄色っぽい感じはします。黄道光の中のDeepSky天体を見るとあきらかに背景が明るく、光害に感じます。
黄道光の先は黄道帯として繋がっていて、対日照がある感じなのですが、さそり座の位置に対日照があるようでハッキリとは分かりませんでした。
●天王星、海王星
天王星は5.8等ですが、肉眼でそらし目を使わずともハッキリ見えてました。肉眼の極限等級は6.5等級より暗いのでしょう。もうちょっと正確に調べたほうが良いですね。天王星、海王星とも模様らしきものは見えず。ただディスクは綺麗でしたが。
●明け方の銀河
ろ座の銀河団が昇ってきて、棒渦銀河で最も見栄えのするNGC1365も鎌のような腕が見えてましたが、高度が低くそれほど見栄えは良くありません。NGC253,NGC55は双方とも巨大で、NGC253は銀河の中の暗黒帯が複雑に見えて迫力満点でした。定番の富士山ではいつも光害の中で随分損をしているような気がします。
●ブルーフラッシュ
グリーンフラッシュは5回ほど見えましたが、今回の遠征では3回目でしたか、太陽が地平線から出て、すぐにスカイブルーが広がったので吃驚しました。これは私だけでなく皆さん目撃。三原さんは撮影にも成功しました。以前、同じ場所で太陽の一部だけブルーに見えたことがありましたが、これだけ鮮やかに見えたのは初めてです。
観望はキヤノン10x42LISでしたが、防振効果抜群で空気の流れまで分かり太陽の様子も良く見えました。ただオーストラリアの日の出の太陽は減光が少なく、グリーンやブルーを確認したらすぐ視野から外さないと危険です。失明の恐れもあるので、細心の注意が必要です。良い子はマネしてはいけません。オウンリスクです。
とにかくオーストラリアでは星の明るさは、透明度が良いため日本よりは1等級は明るく見えている感じです。最初は木星を金星と間違えるくらい空が良いのです。金星はまさに照明で邪魔な感じでした。
三原さんが撮影に成功...ほんの1秒もなくグリーンに変化しました
Canon EOS20Da ISO 100
EF 70-200F2.8 Zoom + 1.4Xテレコン(280mmで撮影)
PLフィルター
シャッター速度 1/1600
絞り F14 2007/06/13 7:00ごろ
クーナバラブランのアカシアモータロッジと青空
帰りのJAL機で幻日を撮影...
今回のオーストラリアは機上から見ると水蒸気が多かったように思います。前日まで大雨だったからでしょうが、かなり条件が悪くても日本より遥かに見えるのは光害が皆無なせいでしょうか。
ムリをしても一度は訪れる価値はあると思います。
LIGHT BRIDGE 16インチ KYOEIで扱ってました。\336,000
投稿情報: KOBA | 2007-07-13 23:00
KOBAさん、コメントありがとうございます!!
ミードのHPでは8月末販売開始となっているのでフライングかなぁ。フライングLightBridgeなんちゃって(^^;;
http://www.micint.co.jp/telescope/LightBridge_web/index.html
投稿情報: 安田 俊一 | 2007-07-18 22:34