オリオン座の右肩(向かってなので左のほう)のベテルギウスの左上の星であるμのほんのすぐ傍28"のところにある惑星状星雲です。13.9等と暗く輝星の傍なので確認するだけでも大変です。
Ninja-400ではOIIIフィルタを付けてかなり300倍以上の高倍率にすると輝星の傍で丸く淡くAbell12が可愛く見れます。スパイダー等の光芒に邪魔されないように注意が必要です。初めて見たのはもう3年ほど前でしたが、ちょっとした感動でした。
とにかく導入が超簡単なことと形状が丸く見えて面白いことから、お勧めです。どうしてもシーイングと透明度のよさが求められます。秋から冬に掛けてのしばれるくらいの寒い夜にいかがでしょうか。
昨夜、富士山の七曲駐車場にFさんご家族、安田さんと出かけて、ちょうどこの対象を見てきました。Fさんはこの対象を一眼デジカメで撮影されていました。
折から、ちょうど入手したての安田さんの新兵器のファーストライト、私は入手後初遠征の微動付き経緯台に125mm屈折を載せての3者3様のM27観望でした。
余りに有名だから座標などのデータを割愛します。
125mmで114倍の倍率で見ると、よく目にするダンベル状に見えます。
ところが、安田さんの40cmで見ると、ダンベル状の部分の1.5倍くらい大きくダンベルの持ち手に垂直方向に楕円状に伸びる光芒がやけに大きく目に付く。
一眼デジカメだと、ダンベル状の部分は斑に赤からピンク色の色が付いて写り、楕円状に伸びる光芒はダンベル部分とは異なる色をして写っていた。
このように、口径によってか、あるいはフィルターによって見え方は著しく異なります。
この星雲の中心星はいったいどれなのかと探し回ったことがありますが、余りにたくさんの星が星雲に埋もれて見えていて、どれが中心星なのか皆目見当がつきません。
ちょうど今の季節は天頂近くにあるこの対象がとても綺麗に見える時期と思います。
皆さんも一度、フィルターを変え、倍率を思い切って高倍率にするなど、これまでのこの対象との付き合い方をひとつ変えてご覧になってはいかがでしょうか?。
これまで、自分の37cmドブソニアンで見えた惑星状星雲を中心に夏~秋の見ごろな惑星状星雲をおおむね網羅して紹介してきました。
ここでは、一度、惑星状星雲について整理して、惑星状星雲の楽しみ方(私の事例)を紹介させていただきます。
惑星状星雲を好きになった訳
ちょうど20年近く前にマゼラン雲に超新星1987Aが現れました。その数年後にはその超新星の残骸の回りに明るいリング状の星雲が形成されていることがハッブルの望遠鏡などで発見され、確認されました。ちょうど、ハレー彗星の地球接近の後、見るべき対象を見失ってしまった自分にとっては超新星の発見やその残骸に発見されたリング状の星雲はとても印象に残っています。
その後しばらくは明るい超新星が発見されるたびに、その光度観測を行うようになりました。昔、高校生の時に変光星の観測を集中して行っていた経験があることから、昔を思い出しながら、楽しい日々を送っておりました。
そんな折、少しでも暗い超新星を見たいと思うようになり、それまで使っていた13cmの反射望遠鏡を手放し、21cmの反射望遠鏡を手にします。ニュートン式反射からカタディオ系反射にしたことで高い倍率が手軽に得られるようになり、より暗い星を見れるようになりました。そこで出会ったのが惑星状星雲です。
超新星爆発とは直接関係ありませんが、リング状の星雲という点では似たような対象だったと思います。しかも、惑星状星雲を見るのに適したフィルターの存在を知り、それを手に入れて見た惑星状星雲の姿はそれまでのノーフィルターで見る惑星状星雲の姿とはかなり異なっていました。有名なM27を見ると、その姿はそれまで写真で見ていたダンベルの姿とは様相が大きく異なっていました。ダンベルの持つ部分に垂直方向にボーっと錘の部分の大きさよりも大きく光芒が伸びているわけです。その時の驚きは忘れられないものとなりました。
これまで紹介してきた惑星状星雲の多くは明るさが10等よりも暗いものです。これらの姿をフィルターを通してもう少しはっきり見たいと思い始めてドブソニアン望遠鏡の入手に至ります。それから見る惑星状星雲は後に紹介する中心星も見え始め、それまでの惑星状星雲観望の趣とかなり異なってきました。写真を撮影する趣味を持っていない故に、紹介する惑星状星雲は全て眼視での観望対象としてのご紹介です。
惑星状星雲の見方(私の事例)
惑星状星雲を見る時には次の2つの点に注意が要ります。
1. 惑星状星雲の波長を通す、バンドパスフィルターを付け、コントラストを上げて観望する。
2. できる限りシーイングの良い時に、でき得る限り倍率を上げてみる。
私の場合には37cmドブで7mmアイピースに2倍バローをつけて、476倍で見ることが多い。
ファインディング用アイピースは12mmですので、278倍となります。シーイングの悪い時にはその半分(バローレンズを外して)の139倍で見ることが多い。ちなみに、シーイングが悪い時には、例えば91cmの望遠鏡をもってしてもM57の中心星を見ることはできませんでした。その時の倍率はおよそ300倍とおうかがいしました。
中心星を見るには大抵の場合には300倍程度の倍率では見えず、500倍近くの倍率にしないと見えない。したがって、倍率を余り上げられないようなシーイングが悪い時には中心星を見ることはほとんど無理なことが多いので、さっさと他の対象を見るように諦めをつけるのが肝心。
低倍率でも楽しめる、あるいは低倍率でないと見えないようなM27やNGC7293以外ではそもそも本体の大きさが1'も無い対象が多いわけだから、惑星と同様あるいはそれよりも小さいわけなので低倍率で見てもその構造はもちろんのこと、中心星を見ることはほとんど無理。細かな構造を楽しめるのは惑星を見る時と同様にかなり倍率を上げて見るのが良い。露出オーバーになった写真と比べると眼視の方が細かく見えていることに気付くのは惑星観望と似たような部分があります。紹介するのに使う星図はDSSからのものなので、特に明るい惑星状星雲の場合には露出オーバーとなっていて本体の複雑な構造はほとんど写し出されていないと思った方が良い。
惑星状星雲の生い立ち
惑星状星雲の生い立ちに関しては様々な文献があるので、詳細を記述するのは避けさせていただきます。
多くの惑星状星雲の実際の大きさは直径およそ数光年程度です。中心星はもとは太陽質量の0.5倍~4倍程度の重さの恒星でした。それが進化する過程で外側の水素が燃え尽きる前に、中心部のヘリウムに火が付き、炭素や酸素を作り始めますが、この質量では炭素や酸素に火が付くことはなく、ヘリウム燃焼シェルができた段階で,赤色巨星化します。この赤色巨星時代に外層大気をゆっくりと放出し、惑星状星雲の元を作り出します。その後、元の恒星は炭素と酸素ばかりで大部分のコアが白色矮星へと縮小してしまいます。
この白色矮星からの紫外線放射を受けて、放出された外層大気が照らし出され惑星状星雲として見えると言われています。
最近の観測ではこの最後の段階での大気放出が球シェル状(球対称)ではなく、双極流的に、2方向にジェット流のように放出されると考えられる事例が多く見つかっています。例えば、M2-9、M76、NGC6302、CRL2688などの砂時計状(バタフライ状)の惑星状星雲です。
これからの惑星状星雲観望
このような見るのにはかなり辛い思いをしないと見えないような惑星状星雲ですので、一般に紹介されていないものが多いのが実情です。しかし、意外に見易かったり、ドブソニアンをお使いの方であれば余り使うことがない倍率かもしれませんが、口径(mm)の1倍~2倍というチャレンジャブルな倍率とフィルターを駆使することでハッブルが映し出すような惑星状星雲を自身の眼で見ることができます。ということで、まだ見たことのない対象を含め、まだまだ私の惑星状星雲観望は続くと思います。何せ,カタログ上は1,600個ほど見つかっているそうですから。さらにはつい2年ほど前に惑星状星雲が形成され始めたもの(V838 Mon)まで発見されており、ドブソニアンを使いこなせる間中楽しませてくれるものと思っています。
Magnitude: 9.6
RA: 04h 14m 16s
Dec: -12°44' 20"
Size: 0.8 x 0.8
中心星 12.2 等
とても明るくて大きくて中心星も見やすい惑星状星雲の一つです。
中心星と思ってきているのが実は中心星ではなく中心部の単に明るい部分だったらどうしましょ。迷うときには思い切り倍率を上げて確認するのが中心星を見るときのコツです。また、惑星状星雲自体も小粒のものが多いので、見るときには200倍以上かけるのが普通と思ってみると良いと思います。シーイングが良いときにはもっと倍率を上げて300倍以上で見るようにしたら濃淡や中心星の存在や諦めていた構造が見え始めます。
これだけ明るくて美しく、中心星も楽しめる惑星状星雲って少ないと思うのですが、愛称も無く、割と知られていませんよね。どうしてでしょうね?。もっと啓蒙活動しなくちゃいけないのでしょうかね?。多くの写真が露出オーバーで、構造が分かるような写真になっていませんが、同心円状濃い部分(ドーナツ部)と薄い部分があって結構いける対象だと思うのでした。
Kimata さんからのお知らせで、Cleopatra's eye(クレオパトラの瞳) という愛称があるとのことでした。
Magnitude: 10.1
RA: 01h 42m 18s
Dec: +51°34' 17"
Size: 3.1 x 3.1
こぎつね座のあれい星雲M27を小さく暗くした感じの星雲。1780年にドイツのメシャンが発見したもので、メシエも同じ年に見ている。中心星は17等星で、この星から発せられる紫外線によって輝いている。距離 8180光年とのこと。写真などで見ると双極ジェット風の姿をしているけど、眼視ではそこまでは見えたことが無い。双極ジェットの解説の時には必ずといって良いほど引き合いに出される対象だから眼視で、もう少し見えてくれると良いのですけど。さそり座のNGC6302の方がM76よりも双極ジェットの感じを強く受けます。
RA: 23h 35m 00s
Dec: +30°30' 00"
12.1等
Size 6'+5'
NGC 7293 Helix よりも淡い。かなり大きいがドーナツ状には見えない。ドーナツの北1/4と南1/4がそれぞれ辛うじて見える。フィルターをつけて視野を少し振る感じでないと見つけられないかも。写真でも同様だと思います。
DSSではほとんど写っていないので、実際にどの辺りに見えるかをファインディング用星図としてつけました。ピンクのボヤッとした辺りに見えます。最初は僕の37cmでは見えなくて、安田さんの40cmで見えた後に、場所が分かって、僕のでも確認できました。フィルタ無しでは全く見えませんでした。
こと座の惑星状星雲 : M57
超有名なので今さらなのですけど、検索対象に引っかからないのもおかしいことだし、知っているようでほとんど知らないこと座の惑星状星雲を題材に少し勉強しなさいよ、とは、安田さんの教え。(^^ゞ
8.8等、距離2,600光年。86"x63"
中心星15.3等
シーイングが良い時に37cmでおよそ500倍の倍率でOIIIフィルターをつけて中心星を見ることができました。シーイングの影響をかなり受けるので、倍率を500倍にしたから見えるというようなものではありません。じっと見ていると、ほんの時折キラリと光るのが見える、そんな感じの見え方がM57の中心星の見え方です。ちなみに91cm望遠鏡で見せていただいたときには中心星を見ることはできませんでした。
リングの中に幾つかある星は中心星よりも見易くてすぐに幾つか見つけることができます。
すぐ傍に、銀河も写真では写っているので、今度見たときには見ようと思いつつ、いつも忘れてしまいます。(^^ゞ
りゅう座の惑星状星雲、愛称: キャッツアイ星雲 です。
NGC6543 0.3'×0.3'
とてもシーイングが良いときに、30cm以上の口径で、300倍程度の倍率でご覧になると、時折、キラリン、と中心星を見ることができます。M57の中心星よりは見やすいのでシーイングの良い時にはぜひぜひ狙ってみてください。ちなみに、中心星は11.3等です。中心星をご覧になる時の倍率は500倍前後が望ましい。300倍程度では見えませんでした。倍率を上げると、写真で見かけるような複雑な構造が見えてきます。いかにもキャッツアイって愛称が似合う様子を見出せたときには嬉しくなって、観望会の時には様々な奇声が聞かれる対象です。
星図のキャッツアイの左側に見えている小さな銀河はNGC6552です。
13.8等なので、キャッツアイの中心星が見えるような空の時にはなんとか見えると思います。
Equatorial 2000:
RA: 17h 58m 33s
Dec: +66°38' 01"
へびつかい座にある惑星状星雲です。NGC6369、中心星は見えなかった記憶があるのですが、写真ではくっきりシャッキリ写っていますね。
とても綺麗なリング状です。リングの部分に明るい星が2個あって、1個は北にもう1個は南にあって、それぞれ11.9等と12.3等なので、リングの南北部分を明るく際立てさせています。
リング自体も明るいし、真ん中の暗く抜けた部分が暗いのでかなりくっきりしたリングと分かります。この惑星状星雲の1.5°ほど西に Snake Nebula : S字状暗黒星雲が見えます。
Little Ghost
さそり座に有る惑星状星雲で双極ジェット状のものです。
Bug Nebula の愛称があります。
17h13m44.72S
-37º 06' 12.05
直ぐに見つかります。惑星状星雲向けのフィルターを付けるとさらに見やすくなります。
同じ季節に見える、M2-9、Butterfly Nebulaと見比べてあげてください。
12.8等という明るさですが、30cm以上で簡単に見えます。
虫のような写真が幾つか見つかると思いますが、フィルターを付けてご覧になるとそのまんまに見えます。大きいので見易い対象です。
これを見たら、次は同じ季節に見えるButterfly Nebula の愛称が有る M2-9
をご覧になると、こちらは双極ジェットの代表選手みたいな、その名の通りが見えます。
アメリカでは三日月星雲(クレセントネビュラ)と言われていますが、私にはどう見ても"くらげ星雲"に見えてしまいます。ふたご座のIC443も写真で見るとくらげっぽいですが、眼視ではこちらのNGC6888が、その薄さといい見え方といい本当にくらげです。
導入は簡単ではくちょう座の十字の要の星であるはくちょう座γから2.5度ほど南西に行ったところにあります。ただ天の川の真っ只中ですので、星が多く、ネビュラフィルタを着けていたほうが発見が容易です。淡いためか空の透明度の影響をかなり受けます。
C8(口径20cm)で初めてみたと思いますが、淡く星雲の真ん中のあたりしか見えませんでした。Ninja-400(口径40cm)では、この写真を淡くしたように見えますが、くらげの真ん中あたりは見えませんでした。
この星雲は超新星残骸だとしばらく思っていましたが、惑星状星雲だそうです。ウォルフ-ライエ星と言われるタイプの星がガスを放出しているとのこと。惑星状星雲というとM57(リング星雲)、M27(あれい星雲)などのように対称形を想像してしまいますが、これは歪ですね。
とにかくこれからのシーズンでは天頂近くに昇ってきますので、お勧めの天体です。私のほうは小口径でもチャレンジしてみようと思います。